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【人材育成】これからの「グローバル人材」が身につけるべき能力とは?

2022/11/01

新しい海外市場でビジネスを展開し、外国籍の企業と協力して事業を行う必要性は年々高まっています。 企業の活動規模をグローバルに展開することで、新しい収益源だけでなく、新しいアイデアや情報を入手できるなど様々なメリットがあります。しかし、そのためには、従業員の意識向上やグローバルな環境で適応できる能力、すなわち、「グローバル人材」の育成が重要となります。

それでは「グローバル人材」とは具体的に何を指すのでしょうか。単にTOEICの点数が高い人のことを指すのでしょうか。それとも、海外でビジネスができるほど英語や他の言語が堪能な人なのでしょうか。

答えはどちらも「ノー」です。「グローバル人材」に欠かせないコミュニケーションなどの要素を習得するには、文法や語彙、テストの点数以上のスキルが必要です。

それでは、グローバル人材育成のために注目されることの多いスキルを見ていきましょう。

目次

グローバル人材とは?

グローバル人材にはさまざまな定義が用いられることがありますが、文部科学省が行ったグローバル人材育成推進会議による定義では以下の3つの要素をグローバル人材の特質としてあげています。
 ① 語学力・コミュニケーション能力
 ② 主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
 ③ 異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー

その他にも幅広い教養と深い専門的知識、チームワークと(多様なチームをまとめる)リーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・(IT分野を始めとした)リテラシー等、グローバル人材が備えるべき特質として定義されています。これをもとに解釈するグローバル人材とは、優れた語学力のみならず、高い人間性を備えた総合的に高水準な人物だということがわかります。それではこれらのグローバル人材を成す要素を築くためのスキルを細かくみていきましょう。

出典:「グローバル人材育成推進会議中間まとめ

【グローバル人材育成:必須スキル①】コミュニケーション能力

グローバル会議での流暢なコミュニケーションは人材育成の目的の一つ

従業員のグローバル人材の育成にまず必要なことは、既存にとらわれない新しい視点を持つための"多様性"と"柔軟性"を培うことです。環境によるコミュニケーション文化の変動が当たり前なグローバル社会においてどのようなコミュニケーション能力が求められるのでしょうか。

正確な「トーン&レジスター」を使いこなす

トーンとレジスターとは、簡単に言うと文章や会話における単語、文法、フレーズの使い方のことです。これを理解していないと、相手の意図を誤解してしまう可能性があります。
トーンはよく聞くフレーズかもしれませんが、レジスターは単的に「場面に応じて現れる特徴的な言葉遣い」と解釈できます。
例えば、Eメール上のやり取りの際、トーンやレジスターがその場面と不合致の場合、フォーマルすぎたり、強すぎるように聞こえるかもしれません。また、会話やメールを自分から発信する際に質問が一般的ではなく個人的な内容になり過ぎていたり、説明の仕方が専門的で複雑すぎることがあるかもしれません。

Eメールに書かれた次の文章3パターンを比べてみてください。

A:「残念ですが、出荷に間違いがありました。これは容認できないので、すぐに問題を解決してください。私が言ったように、金曜日の午前中までに部品が必要です!」

B:「残念ながら、出荷に間違いがありました。大変申し訳ないのですが、できるだけ早めに間違いを訂正していただけませんか?」

C:「残念ながら、出荷に間違いがありました。金曜日の午前中までに部品が必要なので、出荷内容を訂正し、至急発送をお願いします。」

例Aは強すぎ、例Bは優しすぎです。例Cは、この問題をうまく処理するのに最適なトーンです。

グローバル人材育成の要因であるトーンとレジスターに気をつけEメールを送信するイメージ

Eメールは、書き手が辞書を調べたり、間違いがあれば校正したりすることができるため、好まれるコミュニケーション形態です。しかし、英語のコミュニケーションにおいては、書き手が意味を正確に伝える責任を負っています。書き手は適切なトーンと的確なレジスターで情報を伝えることが求められます。このような「トーン&レジスター」の正確性は、グローバル人材に求められる「コミュニケーション能力」に必要な要素の一つです

ハイコンテクスト vs. ローコンテクスト コミュニケーションの理解と適用

文化は通常、ハイコンテクストかローコンテクストのどちらかに分類されます。ハイコンテクストコミュニケーションスタイルの文化では、より多くの情報が暗黙の了解で理解されます。一方、ローコンテクストコミュニケーションスタイルの文化では、前提となる知識やカルチャーの理解がなくても分かるよう、シンプルで明快な表現がされます。

ご想像のとおり、アメリカ、イギリス、ドイツなどの文化圏はローコンテクストです。コミュニケーションは正確で直接的であり、暗黙の了解というコミュニケーションはあまりありません。これらの国の人たちと仕事をするときは、詳細を明確に、正確に表現する必要があります。

一方、日本、韓国、シンガポール、その他のアジア諸国は、ハイコンテクストです。コミュニケーションには多くの層とニュアンスが存在し、言葉の選択が非常に重要な役割を果たします。すべての詳細が提示されるわけではなく、いくつかの情報は暗黙の了解で解釈されなければなりません。

グローバル人材は相手のコミュニケーションスタイルに合わせられる適応能力が求められる

ローコンテクスト文化圏でのハイコンテクストコミュニケーションは、何かを意図的に隠しているような不信感、情報や要件が曖昧すぎるという不満、次のステップに進んで良いのかどうか不明確であるなどの結果を招くことがあります。
逆に、ハイコンテクスト文化圏でのローコンテクストコミュニケーションは、直接的で攻撃的に感じられることがあります。

このように、単に会話ができる、聞き取りができるだけでなく、その場の文化を思案した適材適所なコミュニケーションスキルがグローバル人材には求められます

【グローバル人材育成:必須スキル②】語学力

コミュニケーションをとる上で「相手の言っていることを理解する」、「自分の意思を伝える」ために、まずは幅広いシチュエーションに対応できる語彙力と文法力を身につけることが大切です。標準的な英語ネイティブスピーカーが知っている語彙数は、話す・書く際に使える能動的語彙で約2万語、聞く・読む際に使える受動的語彙では約4万語と言われています。この数の語彙があれば、ビジネスから、エンジニアリング、旅行まで、さまざまなトピックに対応することができます。

もちろん、外国語として英語を学んだ人の多くは、これほど豊富な種類の単語を操ることはできません。話す、書くという能動的スキルでは、ある程度の正確さと流暢さがあれば、シンプルで正確な情報を伝えることができます。長くて複雑な文章はあまり重要ではありません。

リスニングとリーディングといった受動的スキルにおいては、グローバル人材は、スピーチや、会話、文章の全体の意味を理解するために、文脈から推測する能力が必要です。「とはいえ」「したがって」など文章の方向性を示すディスコースマーカーの重要性や、繰り返し、イントネーションの上げ下げなどの意味を理解する必要があります。残念ながらこれらのスキルは重要であるにもかかわらず、語学教育で扱われることはあまりありません。他社とは違う英語研修をグローバル人材育成で実践したい方はこれらのスキルを意識的に促進することをオススメします。

【グローバル人材育成:必須スキル③】異文化理解

グローバル人材の育成に重要な異文化コミュニケーションの描写

多くのグローバル人材育成研修プログラムでは、言語スキルに重点が置かれ、異文化理解の育成にはあまり時間が割かれていません。しかし、文化によって、時間の観念、タスクの完了に対する報酬、立場が上か下かによるフィードバックの与え方、受け取り方などが全く異なる場合があります。

例えば、あるチームが、1年のうちでも特に忙しい時期に、大規模なプロジェクトを依頼されたとします。数週間後、チームリーダーは上司に「仕事に追われることもなく、プロジェクトは予定通りに終了する」と断言しました。しかし、その後、チームは納期に間に合わせるため、定期的に夜10時まで、また週末も働いていたことが判明しました。

マネージャーであれば、チームメンバーが依頼に反対することも、仕事量に文句を言うことも、文化背景的に難しいことと分かっていたはずです。しかし結果的にメンバーに多くの残業をさせ、納期に遅れるギリギリの線で間に合わせる選択をしてしまいました。

その一方で、チームメンバーの方ができることもありました。たとえ上司であっても、議論することや意見の相違は自分のキャリアに不利になることはないということも理解しておく必要があったのです。もし、異文化理解ができていれば、納期を調整することも、納期をずらすことも、まったく別のチームを編成する提案をするなど、別の解決策もあったはずです。

異文化理解ができる人材は、柔軟なアイデアの提供ができる

【グローバル人材育成:必須スキル④】クリティカルシンキング

グローバル人材育成の条件である分析的思考を使って課題に対処する社会人

クリティカルシンキング、そして思考や結論を表現する能力も、グローバル人材の重要なスキルの一つです。では、クリティカルシンキングとは一体何でしょうか。

クリティカルシンキングとは、ある問題やトピックを徹底的に理解するために事実を分析する行為です。クリティカルシンキングのステップには、以下のようなものがあります。

  • 観察:機会、問題、解決策に気づき、予測する能力。
  • 分析:情報を収集、理解し、そして解釈すること。
  • 推論:関連する情報や自身の経験に基づいて結論を導き出すこと。
  • コミュニケーション:他人と情報や結論を共有すること。
  • 問題解決:解決策を精査し形にするためにとる、上記のすべてのステップ。

これは、過去の経験や知識に重心をおいた主観に偏った思考や、慎重に分析せずに結論に達することとは反対のものです。
例えば、A社では営業のコンバージョンが業界平均を下回っており、チームはKPIを達成できていません。最初に考えたのは、スタッフが比較的若いので、もっとトレーニングが必要だということかもしれません。
しかし、クリティカルシンキングで別の問題が見つかるかもしれません。具体的には、マーケティングはリードの数を20%増やすことを課されたものの、実はこれらのリードは顧客にうまく適合していない、ということです。

【グローバル人材育成:必須スキル⑤】リーダーシップ

マネージャーがグローバル人材育成のために従業員の意見を聞いている様子

今日のビジネス社会では、世界のどこにいてもリーダーシップを発揮できる社員が求められています。国際的な優位性を確保するためには、異文化との関わり方を理解し、ローカルとグローバルの両方の視点を持つリーダーが必要です。

また、リーダーシップは役職ごとのマネジメントとは異なる重要なスキルでもあります。(リーダーシップは、役職ベースのマネジメントとは異なり、特定の目標に向かって人々のモチベーションをサポートする役割です。)

そのためグローバル人材は、国際的な視点でチームを牽引する必要があります。命令によってチームを支配するのではなく、あくまでも世界のどこにいても機能する戦略を開発する必要があるのです。

おわりに

グローバルな人材を育成するためには語学力は欠かせませんが、語学力が高いだけではグローバル人材とは認識されません。文脈から読み取る力や異文化理解やコミュニケーションスタイル、リーダーシップなど「人」としてハイレベルな基準が求められるのが近年のグローバル人材の水準です。どこから始めたらいいのかわからない場合は、まず語学力の向上に着手すると良いでしょう。意思疎通ができてくると、次のステップが見えてくるはずです。

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