グローバルコミュニケーション(異文化スキル)
異文化スキルとは具体的にはどんなことなのでしょうか。学生から社会人になったときの自分の気持ちを振り返りながら一緒に考えてみましょう。
皆さんは、会社に入ったばかりの時、全てが新鮮で楽しくウキウキする出来事に見えていたのではないでしょうか。それから、だんだん会社生活や仕事がいやになるという経験を乗り越え、会社生活とはこういうものだと受けとめていくようになったのではないでしょうか。
これが、初めて社会人になる皆さんが経験する異文化体験、その体験を通して身につけていくスキルが異文化スキルです。
学生の時は、自分と気の合う人たちと一緒にいればよかったのですが、社会にでるとそういうわけにはいきません。
社会人になり仕事をし始めた時のウキウキする時期は異文化コミュニケーションでは「ハネムーン期間」と言われる時期です。最初は素敵に思えていた仕事も、嫌な部分が見え、だんだんその状況に不満や不安を感じ始め、会社での新しい環境や異文化に対して拒否反応を起こし始めます。これが「移行期間」となります。そのうちその嫌だという気持ちと新しい環境にチャレンジしていかなくてはいけないという気持ちを繰り返す「調整期間」があり、ここで仕事をしていくのだと自分なりに納得し会社がめざす姿にあわせ自分のキャリアの方向性を見つけることができる「融合期間」に入っていきます。
とはいえ、嫌なことがあれば、「移行期間」「調整期間」を繰り返していくことになります。
このように、日本にいても学校という文化(校風)、会社という文化(社風)の違いを理解しその環境の中で上手くコミュニケーションがとれるようにしていくわけです。
ところが、海外に行くと、考え方や価値観の大きな違いに言葉の問題も加わり、この異文化コミュニケーションの心の推移の波も大きく理解するのに時間がかかります。
実際、海外で仕事をする時、自分が「こうあるべき」と思っていることが、そうならずストレスになることが多くあります。
例えば、ブラジル人は日本人のように、時間厳守ではありません。ブラジル人は仕事より楽しみを優先する人たちです。ブラジル人と一緒のプロジェクトでは、彼らの楽しみを考慮してスケジュールを組む必要があります。
彼らは、納期に間に合うように、残業や休日出勤はしませんし、休暇返上なんてこともありえません。ブラジル人と一緒に仕事をする時は、休暇予定を含めたスケジュールをたてないと、彼らの休暇分だけ納期が遅れる結果となります。私がこの時間的観念に戸惑った時、ブラジルの友人はいつも言いました。
”Aqui é Brasil!”「これがブラジルだ。」
現地の人たちの仕事に関する考え方や価値観を理解するのが、海外で仕事をする時の第一歩です。
サンフランシスコ州立大学大学院英語教授法で修士(MA/TESOL)を取得後、日立外国語研修所、日立総合経営研修所などのマネージャを歴任し、2011年より日立グループコーポレイト施策若手海外派遣プログラムの企画・運営マネージャをつとめ、毎年1000名の若手人財を様々な海外プログラムに派遣した。日本では数少ないATD (formerly, ASTD)* トレーナー資格も有している。日立を定年退職後は、著名大学の非常勤講師として英語や異文化を教えている。社会活動は、NGO生命の碧い星理事(国連担当)として2020年まで活躍。2005年、2010年、2015年の国連欧州本部での青少年による平和の提言の司会や学生のスピーチを指導。
*Association for Talent Development (formerly, American Society for Training&Development)