「ビジネスに役立つビートルズの交わした会話」パート6
『ザ・ビートルズ:Get Back』がエミー賞で5部門を受賞しました!
このドキュメンタリーから、実践に役立つビートルズが実際に交わした会話を紹介するシリーズ。今回はパーソナルアシスタント(個人秘書)であるマル・エヴァンスに、ビートルズがあれこれ頼む会話をみてみましょう。まずはジョン・レノンから。
John: I'm so tired though. It's amazing. Could we have some more tea, Mal, like a pot, you know?
ジョン「なんかすごく疲れてる。びっくりするくらいだよ。マル、もっと紅茶をくれ。ポットぐらいの量ね」
- “Could we have some more~”「~をもっとください」は丁寧な言い方で、 “I”ではなく“we”となっているので、会議などその場にいる全員に何かを持ってくるよう、人に頼む場合に最適です。
- ジョンは疲れたことを強調するのに、 “It's amazing.”と言っています。 “amazing”は「素晴らしい」「驚くべき」と、ポジティブな意味で使われる場合が多いのですが、彼のように皮肉の意味で使う時もあります。 “Amazing!”は単体で「素晴らしい!」の意味で成り立つので使い勝手がいいのですが、表情やジェスチャーを見て真意を判断するので、誤解なくキチンとした印象を与えたい場合は、 “Wonderful!”の方が無難です。
今度はファッション好きのジョージ・ハリスンが、マルに頼み事をします。
George: Mal? Can you send somebody to buy me a... You know those lace bow ties?
ジョージ「マル、誰かに頼んであの…結んであるボウタイ分かる?あれを買ってきてもらえないかな」
“Can you send somebody to~”は、 「誰かに~しに行ってもらえない?」と第三者を使って相手に何か手配を頼む時に使う表現です。目上の人に使う場合は、 “Can you”より丁寧な “Could you”で会話を始めましょう。
ストレスのたまるスタジオでの仕事で、「マル!マル!」と叫びながら、「使えない奴だ」と文句を言う時も、ジョンはジョークを忘れません。
John: The drums are on PA! It's not my idea of a personal assistant.
ジョン「ドラムの音がPAから出ている!全くもって俺の良しとするパーソナルアシスタント(PA)じゃない」
パーソナルアシスタントのマルに文句を言いつつ、 “personal assistant”の頭文字P.A.を、音響システムのPAとかけて、音響に対する不満を伝えるジョンならではの高度なジョークです。直後にポール・マッカートニーが笑いながら “No.”と言っていますが、職場の雰囲気を悪くしないためにも冗談は必要ですね。ちなみにポールの言った “No.”は、ジョンの意見に反対しているのではなく、 “It's not my idea of a personal assistant.”(直訳すれば「俺の考えるパーソナルアシスタントではない」)の否定文を受けて、「僕もそう思わない」とジョンに同意しています。
著書に『ビートルズは何を歌っているのか?』『クイーンは何を歌っているのか?』『ルート66を聴く-アメリカン・ロード・ソングは何を歌っているのか-』がある。洋楽歌詞解説者としてNHK-FM「ディスカバー・クイーン」等に出演。フジテレビ系「関ジャニ∞クロニクル」(英会話伝言ゲーム等)の製作・英語監修、関ジャニ∞「All You Need Is Laugh」の歌詞監修と特典映像の制作・出演もしている。上智大学文学部英文学科卒。米国10年、中国4年滞在。