スピーキング力の3つのステージ
スピーキング力と一言でいっても、イメージするものはひとりひとり異なるかもしれません。私は、スピーキング力を3つのステージに分けてお伝えています。1つめが「『言える』のステージ」、2つめが「『話せる』のステージ」、そして3つめが「『伝わる』のステージ」です。
1.「言える」のステージ
まずは、そもそも「どう言えばよいか知っているかどうか」という知識のステージです。駅への行き方を知りたい場合、「駅への行き方を教えてください」という表現を知らなければ聞くことができません。知らないものは口から出てきませんので、初級者にとっては、英文を組み立てることができないため、「そのまま使える表現を知る」ところから入るのがよいでしょう。なお、旅行中の買い物だけで英語を使いたいという場合は、「これはいくらですか?」や「もっと小さいサイズはありますか?」、「少し安くなりませんか?」など、「言える」という英語力だけでも何とかなるため、買い物に必要な表現を短期集中的に学習するだけでも効果があります。
ビジネスにおいては、プレゼンテーションのように一方的に情報を伝える場合は「言える」というステージでも何とかなりますが、質疑応答に入ると対応できなくなります。
2.「話せる」のステージ
「言える」だけでは会話はできませんから、2つめのステージが「話せる」です。このステージは、こちらが言いたいことを言えることだけでなく、相手が言ったことを理解して、そして英語で対応するというレベルです。たとえば、旅行中の外国人に道を聞かれた場合、どこへ行きたいのかを理解し、そこまでの道順を教えてあげるという対応ができることを意味します。
ビジネスにおいては、質疑応答に対応できるというステージです。相手の発言を理解できることや、相手の質問に答えられることによって、コミュニケーションが成り立ちます。
3.「伝わる」のステージ
最後が「伝わる」のステージです。日本語においても「うまく伝わらない」という悩みを持っている方は少なくありません。日本語においても「正しければ伝わる」というわけではなく、「説明力」がポイントとなります。そのため、「英語は正しいけれど、伝えたいように伝わらない」というケースがあります。もしかしたら、話している言語は英語でも、「察してもらう」という日本的なコミュニケーションスタイルになってしまっているのかもしれません。
『異文化理解力』を書いたエリン・メイヤーさんによると、日本は世界一の高文脈文化(察することによるコミュニケーション)です。「そこまで言わなくてもわかるだろう」というコミュニケーションスタイルでは、相手に伝わらないことが必然的に増えてしまいます。「伝わらない」という場合には、結論や具体的な部分まで言葉にしているかどうかを振り返ってみるとよいでしょう。
まとめ
場面によって、どのステージでの運用になるかが変わります。たとえば、旅行であれば現地の人とコミュニケーションを取れるものの、仕事になるとうまく英語が伝わらない、というケースもあるでしょう。逆に仕事の英語はジャンルが決まっているため何とかなるものの、雑談になるとうまく話せなくなるというケースもあります。
今必要な場面において、どのステージにいるのかを確認し、次のステージに上がるには何が必要なのか、ということを考えてみると、やるべきことが見えてくるかもしれません。
次回のテーマは「環境と基準で学習効果アップ」です。

SEから英会話講師へ転身。その後、TOEIC対策を中心とした英語セミナー講師として、これまで大手企業からベンチャー企業まで全国約200社以上での研修を担当してきたほか、大学や高校でも教える。脳や心の仕組みを活用した学習法を提唱し、上達の本質を英語学習に応用している。
高校2年で英検4級不合格から英語学習をスタート。苦手意識を克服した後、TOEIC 990点(満点)、英検1級。著書は50冊以上。雑誌連載のほか、企業における学習コンサルティング、セブ島留学TOEICプログラム監修、「英語思考」を用いた日本語プレゼン研修も担当。2011年5月から毎日英単語メルマガ「ボキャブラリーブースター」を配信中。