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レベル別に適した英語テスト活用

2022/03/02

前回のコラムではどんな社員に各種英語テストが向いているかを把握したうえで、社員向けのテスト選定を行うことをおすすめしました。そのために確認すべきはCEFRのレベル換算だということをお伝えしました。また、日本人の大半はB1以下のCEFRレベルであるため、そのレベルまでを丁寧に測れるテストが社員の能力判定と育成に有効であると述べました。
C1、C2まで測るテストにはかなり難易度の高い問題が入っていますので、そのような問題を平均的な日本人がたくさん解いても有益ではありません。解けない問題をたくさん解いても「C1ではない」という判定が出るのみで、A2レベルなのかB1レベルなのかの判定が正確に付かないためです。


また、選ぶテストによって、どのような技能を測るかが異なります。
下記の図は技能別に記載をしています。
CEFRを定義する"COMMON EUROPEAN FRAMEWORK OF REFERENCE FOR LANGUAGES: LEARNING, TEACHING, ASSESSMENT"の資料(外部リンク)でも技能別(スピーキング・ライティング・リスニング・リーディング)にCAN DO Statementが記載されています。
なお、一般的にリスニングとリーディングのreceptive skills(受動的な技能)のほうがproductive skills(能動的なの技能 -アウトプット力)よりも先に育つと考えられていますので、LRのテストはC1までを測るものを活用し、SWはB1までを測るテストを活用するなど、使い分けてもよいでしょう。


さまざまなテストを受験し、研究してきましたのでそれぞれのテストがどのようなレベルの人に適したテストか、CEFR換算の情報および受験した感想を根拠に私見をまとめました。


◆Listening/Readingテスト

テスト名CEFRレベル江藤の私見
TOEIC Bridge®A1-B1TOEIC LR®テストでB1の評価となる780点以下の層に向いているテスト。特にTOEIC545点以下はA2レベルなので、Bridge®で評価をし、学習成果を確認すると成長がわかりやすい。
英語応対能力検定®江藤試算 (A1-B1)訪日外国人への応対が十分にできるかどうかを測る接客業向けの試験。CEFRとの関連性を示す公式な研究が行われていないが、問題の難易度は低い。基本的な案内や会話がわかるかを測る試験なので、英語初級者から中上級者向け。
TOEIC LR®A1-C1200問の長いテストなので、集中力も必要だ。長文読解は複数の記事を見比べて総合的に情報を判断するダブルパッセージ、トリプルパッセージがあるのが特徴。多くの情報を組み合わせて判断する力が問われるので、日頃から英語の情報処理に慣れていないと問題を解き終わらない。A2-B2の人の力を測るのに適しており、A1の人、またギリギリA2の人の力を適切に測れない。
Linguaskill Business® LRA1-C1TOEIC®と測るレベル層は同じであるものの、リーディングパートにはパッセージの中の欠けている単語を打ち込むタスクがあり、アウトプット力も求められる。また、長文読解はシングルパッセージだが、長いので、負荷が高いと感じる受験者も多い。A1レベルの人にはかなり難易度が高いので、選択問題であるがゆえ、点数は多少取れるが、実質的にはほとんど解けない可能性が高い。
CASEC LR®A1-B2TOEICと比べて時間が短いうえ、長文読解がない。そのため、受験者の負担が少ない。C1レベルの長文読解がないため、測れるのはB2までとされているが、問題自体は決して簡単ではない。A1レベルの人にはかなり難易度が高い。選択問題であるがゆえ、点数は多少取れるが、実質的にはほとんど解けない可能性が高い。

◆Speaking/Writingテスト

テスト名CEFRレベル江藤の私見
TOEIC Bridge SW Test®A1-B1LRテスト同様に初中級者向けのタスクで構成されている。LRテストのスコアが低い社員はアウトプット力も確実に低いので、こういった初中級者向けのアウトプット力を試すテストから始めよう。A1、A2の判定がしっかりできる。
英語応対能力検定®江藤試算 (A1-B1)スピーキングテストのみでライティングはない。基本的な指示や案内が言えるかの能力を測っている。英語初級者であっても答えられる簡単なあいさつ表現からはじまるので、初心者にやさしい構成のテスト。CEFRとの換算情報を公表していないものの、簡単な問題が多いので、A1、A2相当の判定がしっかりできると言える。
CASEC SpeakingA1-B1の途中「ごめんなさい」と謝るといった簡単な表現から始まり、ちょっとした説明をするなど、あくまでも日常生活が英語でできるかを測るテスト。英語が苦手な社員はまずはこのレベルのテストから自信をつけるのがおすすめ。A1、A2の判定がしっかりできる。
TOEIC SW®A1-C12021年に「解決策を提案する問題」がなくなったため、タスク難易度は下がったもののA1レベルの人ができるタスクは音読に限られることが多い。A1やA2の下のほうのレベルの人の力をあまり的確に測れない印象。A2の上のほう以上のレベルの人の能力を発話内容、発音、流暢さなどから総合的に測るのに向いている。
Linguaskill Business® SWA1-C1プレゼンテーションをする、メールを書くといったビジネスに直結する能力を短い時間で評価するため、A1から測れるとはいえ、実際にはA2以上の受験者に適したテスト。イギリス英語の試験だが、発音がアメリカ英語でも問題なく評価される。
VersantA1-C1スピーキングにおいて意見問題は評価対象にならないため話す内容を評価する問題はない。流れた音声が理解できたか、適切にすぐに反応できたか、発音がネイティブに近いか、流暢かといった英語の運用能力を試す。日頃から英語に慣れていないと難しく感じる。ライティングも文法力や構文力を見られており、意見陳述といったアウトプット内容を問う問題はない。
TSSTA1-C1スピーキング試験のみ。ライティング試験はない。質問が日本語でも流れるのが特徴でリスニング力のない初級者も文を組み立てて話すことができれば回答可能。短い応答のみを求められる。C1まで測るテストであるものの、他のC1レベルまでを測るテストと比べて、かなりタスク難易度はやさしい印象。
GCASA1-C2この中のテストで唯一C2までを測ることができる。そのため、難易度が高い質問が後半にされる。面接員と議論するタスクがあり、自分の意見を否定されても再度別の観点から正当性を主張する必要がある。A1レベルも測れるとされているが、面接員との会話であり、質問内容が難しいので、「聞き取れず申し訳ない」という心理がはたらき、初級者には精神的負担も大きい。中上級者におすすめのテスト。

以上、社員のレベルに合ったテストを選ぶ参考になりますと幸いです。なお、日本の英語教育の実情を考慮した日本独自での研究も続けられており、CEFR-J(外部リンク)というものも存在します。
日本で運営されている民間テストや販売されている教材がCEFR準拠なのか、CEFR-J準拠なのかといったことも参考にしながら社員にふさわしいテストや教材をご選択ください。


江藤友佳

コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジ修士号取得。外資系コンサルティングファーム勤務を経てから株式会社アルクと楽天株式会社にてビジネスパーソンの英語教育に従事。さまざまな英語スピーキング試験の試験官資格を有する「英語力評価」の専門家。著書に『ロジカルに伝わる英語プレゼンテーション 』などがある。

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