【英語研修お役立ち情報】第8回「機会損失」を動機づけにつなげる
人間が行動する理由は、「快楽の追求」または「苦痛の回避」と言われています。
動機づけについても、好奇心や意欲が沸き上がることによる「内発的動機づけ」と、昇進のためや報奨金のためなどの「外発的動機づけ」に分けられます。
いずれにしても、取り組む「意味」がないことには行動に移したり、取り組みを継続したりすることができません。
「将来において英語が必要なのに学習に取り組まない社員が多い」という悩みを抱えている人事担当の方も少なくありません。とはいっても、一方で「英語への緊急性は低い」というジレンマに陥っている場合も多いでしょう。
多くの企業において、英語ができないことによる最も大きなダメージは「機会損失」です。
ある企業の人事担当者様とお話をしたとき、英語ができる社員がいないため海外からの注文については全て断っているという話をうかがいました。また、別の企業の現場で働くエンジニアの方から次のようなお話をうかがったこともあります。
「英語が必要ないと思っている人は多い。でも、実際には現場でたくさんの機会損失が起こっている」
知らない / 気づいていないからといって、必要性がないわけではありません。
国内市場における現状だけを見ているだけでは、「英語は不要」だと感じるかもしれません。しかし、視野を広げ、視座を高め、視点を世界に移すことで、英語をツールとして活用することの可能性の大きさに加えて、英語というツールがないことによる機会損失を感じ取ることができるかもしれません。
江戸時代末期、福澤諭吉は「英語は商売の言語だ」と感じたことで、それまでに精通していたオランダ語を離れ、英語を習得することに力を入れた経緯があります。まさに、英語を身につけることが技術力も低く、経済力も低かった当時の日本の国力アップにつながることに加え、英語を身につけなくては多くの機会損失に見舞われる可能性があることに気づいていたのでしょう。
もちろん、当時の状況と現在の状況は大きく異なりますが、企業活動における英語の重要性や必要性を考えると、「商売の言語」という特徴は現代においても変わっていません。プログラミング言語はじめ技術は英語で始まることが多くあります。英語は素早くスタートを切るための「スピードツール」でもあり、世界市場におけるコミュニケーションを取る「拡大ツール」でもあります。
一般論としてではなく、英語が自社にとってどのような役割を持つのか、機会損失になっていることがないかをあぶりだすことによって、その機会損失を動機づけにすることが、まずは外発的動機づけとしての苦痛の回避につながり、英語ができることによるメリットが「自分ごと」になることによって、内発的動機づけへと変化しやすくなります。
SEから英会話講師へ転身。その後、TOEIC対策を中心とした英語セミナー講師として、これまで大手企業からベンチャー企業まで全国約200社以上での研修を担当してきたほか、大学や高校でも教える。脳や心の仕組みを活用した学習法を提唱し、上達の本質を英語学習に応用している。
高校2年で英検4級不合格から英語学習をスタート。苦手意識を克服した後、TOEIC 990点(満点)、英検1級。著書は50冊以上。雑誌連載のほか、企業における学習コンサルティング、セブ島留学TOEICプログラム監修、「英語思考」を用いた日本語プレゼン研修も担当。2011年5月から毎日英単語メルマガ「ボキャブラリーブースター」を配信中。