社員のモチベーション管理は人事担当者の仕事なのか!?
人事の方々とお話をすると「社員のモチベーションが低くて、研修出席率が悪い」といった悩みを聞き、「どのように社員のモチベーションを上げたらよいか」とご相談を受けます。
私が楽天のグローバル人事部の一員として社内公用語の英語化を担当していたときも、社員のモチベーション管理の話が話題になることがありました。しかし、解決しなくてはいけないのは、社員のやる気を高めることでしょうか?
語学力は「十分な時間数学習する」「アウトプットする」というプロセスを経て身につきます。モチベーションが高い人は時間数をかけることが多いので、モチベーションがあったほうがいいのは事実です。
しかし語学力アップのための必須要因はモチベーションではなく、あくまで練習時間数です。
母語を習得したのは「モチベーション」のおかげではなく、学校に行き国語授業を受けざるを得ないという生活がずっと続いたためです。また、日本にいれば日本語を一日中目にし、耳にするので、子供たちは日本語を習得します。
同じ原理で、モチベーションとは関係なく、英語を使えば英語が上手になります。
楽天では「モチベーションを管理しようとしてもしょうがない。英語を使う仕組みづくり、学ばせる仕組みづくり、環境づくりが重要」と考えていました。
日報は英語で書かなくてはいけない、社内通達は日英表記必須といった「仕掛け作りをする」「制度づくりをする」ということを通して、社員が英語に触れる時間を増やすことから社員の行動変化を促しました。
また、業務時間内に英語研修の一部を組み込むことで社員に「仕事として」真摯に英語学習に向き合ってもらうことができます。例え任意の時間に行うE-learningであっても、「E-learningシステム上に記録されている時間を元に、毎月上限○時間まで残業として記録すること。」といったことを制度化すると、学習が業務化し、社員はやらざるを得なくなります。
「やらせる仕組みづくり」は社内承認を取るのが大変かもしれませんが、社員のモチベーションに依存することなく、学習効果が高いです。
人事部のみなさんは日々、多くの業務を抱えて本当に多忙かと思います。研修成果がシビアに求められる場合は、社員のモチベーション管理をするよりも、制度づくりに注力してみてはいかがでしょうか。語学力アップに必要不可欠な学習時間数を確保しやすい制度作りをすることが研修成果を出す秘訣です。
コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジ修士号取得。外資系コンサルティングファーム勤務を経てから株式会社アルクと楽天株式会社にてビジネスパーソンの英語教育に従事。さまざまな英語スピーキング試験の試験官資格を有する「英語力評価」の専門家。著書に『ロジカルに伝わる英語プレゼンテーション 』などがある。