「ビジネスに役立つビートルズの交わした会話」パート8
ドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ:Get Back』から、ビジネスに役立つビートルズの会話を紐解くこのシリーズ、今回はジョージ・ハリスンがプロデューサーのジョージ・マーティンに「仕事の調子どう?」の意味で発した言葉をみていきましょう。
マーティンはレコード会社から独立して、レコーディング・スタジオを有する会社AIRを設立しました。ビートルズの方も、自分達の会社アップル・コアを設立しますが、高い理想に経営手腕が伴わず危機に陥っていため、以下のようにジョージがマーティンに質問したという訳です。
“How’s your studio and business and everything going? Hasn’t gone sour on you then? It hasn’t disintegrated like ours?”
「スタジオやらビジネスやら全部、うまくいっている?難しいことになってないよね?僕らの会社のように崩壊してない?」
“How’s ~going?”「~はどうなっていますか?」は、ストレートでカジュアルな表現ですが、プロジェクトの進捗状況を把握したい時など、ビジネスでもよく使われます。
”and everything”は、”and all that”と置き換え可能で、どちらも言葉を並べた後で、「その他のものも全てまとめて」の意味でよく使われます。ただ単語を並べるだけでなく、こういった一言を足すと、印象が柔らかくなるのでお勧めです。
今回のジョージの発言でさらにお勧めなのは、“Hasn’t(It hasn’tのItが省略されています) gone sour on you then? It hasn’t disintegrated like ours?”と、否定文の最後の方(“you then”と“ours”)の語尾を上げて、疑問文にしてしまう会話の方法です。カジュアルな口語表現ですが、否定文だけでなく肯定文も同様に語尾を上げることで疑問文にでき、主に何かを確認したい場合にネイティブの間で非常によく使われるやり方です。日本人にとって便利なのは、「主語と述語を入れ替えて…」と、頭の中で疑問文を組み立てる必要が無いことです。
メール等の文書では、誤解が生じないように明快に書くことが必須ですが、会話は人間関係を円滑にするためにも、教科書に載っているような表現に終始せず、ネイティブの人々の使う多彩な表現方法を取り入れてみるのもいいのではないでしょうか。
著書に『ビートルズは何を歌っているのか?』『クイーンは何を歌っているのか?』『ルート66を聴く-アメリカン・ロード・ソングは何を歌っているのか-』がある。洋楽歌詞解説者としてNHK-FM「ディスカバー・クイーン」等に出演。フジテレビ系「関ジャニ∞クロニクル」(英会話伝言ゲーム等)の製作・英語監修、関ジャニ∞「All You Need Is Laugh」の歌詞監修と特典映像の制作・出演もしている。上智大学文学部英文学科卒。米国10年、中国4年滞在。